美味しいイタリアンはどこに?

エスプレッソ苦い誘惑

「どこに行く?」「じゃあ、イタリアへ行ってみるか!?」いつもの調子で言った冗談から本当にイタリアへ行くことになってしまった。20年以上も前だったので、今のようにスマホで簡単に情報などはゲットできなかった。美味しい店を探すには「るるぶ」のような旅行ガイドブックぐらいのものだった。とにかく、予備知識がゼロの状態でローマに降り立った。さすがにローマは歴史を感じさせる街で、石畳の道路やレンガ造りの立派な建物が私たちを圧倒した。一つだけ写真などからでは伝わってこなかった誤算もあった。それは、そこら中に捨てられていたゴミと匂いだ。少しもったいなさを感じた。目的を果たそうと早速イタリアンレストランを探す。ひたすら自分たちの足で歩き回り探してみるのだが、初めて訪れた地でうまいものを探すのは難しかった。いくら歩いてもそれらしき店を探すことができなかったのだが、あることに気がついたのだ。それは「BAR」という表示を掲げた店が多いことだ。私たちの感覚でいうと、お酒を飲む場所というイメージなのだが、腹が減っていたことと歩き疲れたことで、何か食べるものがあるかもということで入ってみることにした。

中に入ってみると、日本でおなじみの「スタバ」のようなコーヒーショップのような印象府だった。アルコールも置いてあるが、昼間は、喫茶店のようだった。メニューはワンピースごとに切り分けられたピザとドリンクはカプチーノかエスプレッソといったところだった。なんにせよ、空腹の私たちはここで腹ごなしすることにした。ピザは頼むことにして、ドリンクは…甘いものを控えていたのでエスプレッソを頼んでみた。しばらくすると、奥の方から「キュ~~ブチュプチュ」という湿った機械音がしたので振り向くと、エスプレッソマシーンらしき機械からドロドロの黒い半の固形状の液体が盃大のカップ(?)に流れ落ちていた。あっという間にカップ一杯になり、店員さんはそれを私の前に差し出した。「少なっ!!」これが本場なのだろうと思ったが、飲み方を知らなかった。一気に行くのか、ちびちびやるのか…。思案の末、一気に行った。「苦っ!!」少ない分だけ苦さが凝縮されているような気がした。苦みの中に苦みしかないといった感じで、あまりに強烈だったため、ピザの味はなく完全に消えていた。

店を出て500歩ほど歩くと、見慣れたBARの看板が視界に飛び込んできた。なぜだかわからないが、吸い込まれるように店に入ってしまった。気がつくと、二度と頼まないと心に誓ったエスプレッソをまたしても頼んでいた。眉間にしわを寄せて一気に体内へ流し込んだ。相変わらずに苦いのだが、少し順応してきたことを感じていた。そんなことを3回繰り返してその日の食事は終了してしまった。その日は美味しいイタリアンに出会うことはできなかったが、エスプレッソを飲むことで、なんだかイタリア人になり、ローマの街になじんだように感じた。後にエスプレッソの正しい飲み方を調べてみたが、出されたエスプレッソに溶け残るぐらいの砂糖を入れてかき混ぜたら、液体部分は一気に飲み干し、残った砂糖をスプーンですくいペロリとするようである。

イタリア初日は、エスプレッソの苦い誘惑にやられてしまったが、これはこれでイタリアの食文化を知ることができたので良かったということにしておこう。美味しいイタリアンに出会うのはまだまだ先のことになるのでした。



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